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量子時代の金融を守る――Confidential Computingが拓く、安全なデータ活用の未来。

作成者: Sofie Krabbe|2025.09.17
 

量子コンピュータの脅威は、もはや将来の懸念ではなく、すでに現実化しつつあります。悪意ある攻撃者は現在のうちに暗号化データを収集・保存し、将来的に量子計算を用いて解読を試みる「Harvest Now, Decrypt Later(今収集し、後で解読)」攻撃を想定しています。このことは、量子耐性技術への移行を早急に進める必要性を示しています。

世界全体のデータ量は膨大であり、その全体像を把握するのは困難です。たとえば、世界では毎日3,600億通以上のメールが送信されています。しかし、この莫大なデータフローにもかかわらず、データの潜在的な価値は依然として十分に活用されていません。

国家、社会、そして個人のいずれのレベルにおいても、データが提供し得る真の価値にはまだ到達していません。情報をより効果的に収集・活用する仕組みを整えることで、イノベーションの推進、意思決定プロセスの高度化、重要な新たな洞察の創出、さらには生活の質の向上といった多方面での進展が可能となります。

データが十分に利活用されない主因の一つは、セキュリティおよびプライバシーに関する懸念です。これらは規制・法的要件への対応に加え、社会的・倫理的観点からも極めて重要です。実際のデータには、EU一般データ保護規則(GDPR)の対象となる個人情報、知的財産権により保護される情報、さらには事業継続に不可欠なクリティカルデータが含まれています。したがって、データ利活用は「完全な保護」を前提とする必要があり、この要件を満たすソリューションこそが、Partisiaのテクノロジーです。

 

最先端の大学研究から誕生した技術

Partisiaは暗号化データの安全な運用と計算を可能にする先進的なソフトウェア企業であり、信頼性の高いパートナーとして企業を支援します。同社のプラットフォームは、個人、政府、民間企業が保有するデータをセキュアかつ法規制に準拠した形で活用できるように設計されており、透明性とプライバシーの最適な両立を実現します。

PPartisiaは2008年に誕生。北欧デンマークの名門・オーフス大学の暗号技術&サイバーセキュリティ研究から生まれたスピンオフ企業です。

 

量子コンピューティング時代を見据えた機密情報セキュリティの実現

  • 量子コンピューターを用いて高度な問題を解決すること自体は重要ですが、その計算処理をセキュアかつ保護された環境で実行することも同等に重要な課題です。現時点で世界に存在する量子コンピューターはすべて商用モデルであり、実質的には大規模グローバル企業を通じてレンタル利用する形態が一般的です。

    この状況は、機密情報の秘匿性に関わるセキュリティ課題を浮き彫りにしています。Partisiaは、量子時代に特化した革新的なプライバシー保護ソリューションを提供することで、こうした課題に実効的に対応します。

    規制産業、特に金融分野における量子技術活用を検討する際には、量子耐性を備えた「ポスト量子暗号(PQC)」および「量子鍵配送(QKD)」という少なくとも二つの主要技術が極めて重要な役割を果たします。

    これらの技術が機密情報の保護にどのように寄与するのかを説明する前に、それぞれの技術について概説いたします。

    PQCは、量子コンピューター時代にも“解読されにくい”ことを前提に設計された次世代の暗号技術です。

    一方でQKD(量子鍵配送)は、量子力学の仕組みを使って暗号鍵をやり取りする方法で、特別なハードウェアと量子物理の原理を利用して高い安全性を実現します。

 

 

「Quantum Rocket」:量子技術を段階的に活用する3ステップモデル


「量子コンピューティングの可能性を最大限に引き出し、リスクを最小限に抑えるために、Partisiaは“量子ロケット”と呼ぶ3つのステップを提示しています。」これは、PartisiaのCPO(最高製品責任者)であるMark Bundgaardがこう付け加えています。」

「量子の力を解き放つカギは――リスクを制御すること。QKDと量子コンピューティングの未来は、安全性の確保から始まります。」

以下に3つのステップの概要を示します。

一般に“ポスト量子対応”とは、量子コンピュータが実用化された環境下でも機密情報を確実に保護できるよう、現行システムをあらかじめセキュアに備えることを指します。


ステップ1:量子コンピュータ時代におけるグローバルな情報保護

第1のステップは、プライバシー強化技術を活用して現行システムのセキュリティを確保することにあります。量子技術の発展が本格化する中、機微情報を保護するためには、ポスト量子暗号(PQC)への移行が不可欠です。

第2ステップ:新技術の可能性を検証・活用

第2ステップは、PQCとQKDを組み合わせた量子コンピューティングが提供する新たな基盤技術を受容・検証する段階です。量子技術は将来的に多様な産業に変革をもたらす可能性を秘めており、その潜在力を活用するためには、従来型の暗号技術体系の再定義が不可欠となります。

第3ステップ:量子コンピュータ実用化の時代におけるデータプライバシー確保の方法

将来的に量子コンピュータは、現在“解読不可能”とされる暗号方式の多くを突破できる可能性があります。これは金融機関を含むあらゆる組織にとって、データプライバシー保護に関する重大なリスク要因となります。

この現実に備えるには、量子計算による脅威にも耐え得る堅牢かつ量子耐性のあるセキュリティ対策を構築する必要があります。

この課題への対応は任意ではなく、将来的なリスクを管理し、低減する上で不可欠な要件です。



量子時代における金融データの保護

金融業界は量子技術の進展により、従来のセキュリティモデルでは対応が難しい新たな課題に直面する一方で、競争優位性を獲得する機会も得ています。量子コンピュータが実用化され、性能が向上することで、従来の暗号方式に対する深刻なリスクは近い将来現実化する可能性が高まっています。

現在、量子コンピュータによる暗号解読リスクに対抗する手段として、ポスト量子暗号(PQC)が開発されています。PQCは“解読不可能”を前提に設計された耐量子計算アルゴリズムであり、量子時代においても金融データの機密性と完全性を確保する有効なアプローチと位置づけられています。

量子鍵配送(QKD)とポスト量子暗号(PQC)の組み合わせは、金融業界におけるセキュアな通信の新たな可能性を切り開きます。これにより、暗号鍵交換の高度な安全性が確保され、不正取引やサイバー犯罪の早期検知・防止が従来よりも高い精度で実現可能となります。

量子鍵配送(QKD)は、暗号鍵交換のプロセスにおいて不正アクセスを検知する機能を備えており、金融取引に対するセキュリティ層を一段と強化します。

プライバシー保護と機密情報のセキュリティ確保は金融業界における最優先課題ですが、量子技術の進展はそれを超えて、数多くの革新的なソリューションを実現する新たな可能性を開拓します。

量子コンピュータは金融機関が直接保有するのではなく、外部事業者による提供が主流になると見込まれます。その計算能力をセキュアに活用するためには、データ保護と規制遵守を両立するコンフィデンシャルコンピューティングの導入が不可欠です。

量子コンピュータの実用化により、金融機関は新たな洞察の創出、リスクモデルの高度化、革新的な商品設計、そして新しいデータ処理手法の活用が可能になります。一方で、量子計算には必然的にデータ投入が伴い、金融業界における厳格な規制・コンプライアンス要件がその導入に大きな制約となります。

Partisia Confidential Computingは、暗号化データ上での計算を可能にすることで、金融機関が外部の量子コンピュータを安全かつ効率的に活用する道を開きます。この仕組みにより、計算結果の知見や付加価値は当該金融機関に限定され、規制要件や機密保持の観点からも安心して導入できる基盤を提供します


量子時代の情報保護と共有を可能にする“鍵”――それがPartisaのテクノロジーです。Partisia Confidential Computingを組み込むことで、量子コンピュータを“安全に使える”未来が現実になります。」(Partisia CPO: Mark Medum Bundgaard)

 

プライバシーを損なうことなく、データの潜在力を最大限に活用するアプローチ

現在の最大の課題は、データのセキュリティ確保にとどまらず、プライバシーを確保した上でその潜在的価値をいかに引き出し、最大限に活用するかという点にあります。

技術の進展により、暗号化環境下での共同データ分析が実現可能となりました。これにより、機密性を維持したまま複数組織間で洞察を共有でき、知見の相乗効果を創出することが可能となります。

量子時代の到来は、深刻なリスクと同時に計り知れない機会をもたらします。特に金融分野においては、量子コンピューティングの潜在力を戦略的に活用しつつ、それがもたらす新たなセキュリティリスクを先取りして対処する能動的なアプローチが不可欠です。

プライバシー強化技術 × 量子耐性暗号 × QKD。Partisiaは、この量子革命をリードし、機密情報を“守りながら活かす”新時代を切り拓いています。